先日、アメリカでの飲酒テストについてアップした(http://d.hatena.ne.jp/amigo_kimura/20060317)。それまで10カ国ぐらいプチ貧乏旅行をしたのだが、トラブル編としてインドはニューデリー空港の白タク事件を紹介したい。
10年以上前の話なので、21世紀にあてはまることかは不明だが、悠久の国インドのことだから、まだ十分ありえる話とも思う。
1990年と91年と2年連続で訪印した。これは最初の訪問の時のこと。
宿も取らずに往復の格安チケットのみを手にインドへ向かった。今思えばそれがそもそも無謀だったかもしれない。インド、ニューデリー空港に到着したのは確か夕方だったと思う。
「地球の歩き方」(「地球の迷い方」と揶揄する人もいるが、あれはあれで役に立つものである)に書いてあるとおり、30ルピー(当時は300円)の市内行きリムジンバスのチケットを買い、ボーっと空港の外に出ようとした。
小柄なちゃきちゃきしたインド人が「リムジンバス??」と話しかけてきた。
イエスと答えると「チケット見せろ」。
「ほれ。」
「これは、俺のバスだ」
「そうか」
のこのことついていくと、こぎれいな日本のワンボックス軽自動車があった。
「リムジンバスってもっとデカイんじゃないの?本当にこれ??」
「もう一度チケット見せろ」「うん、間違いない」
おれも、長時間フライトで疲れていたのだろう、そのまま乗り込んだ。
急に助手席に相棒が乗ってきたのに「おやっ」と思ったのだが。乗客は僕1人。
しばらく他愛もないことを話しながら走っていると、突然
「130ドル払え。今100ドル、ニューデリーに着いたら30ドル」
ん??なんか今、おれにとってよろしくないことを言われたかなあ、と思いながらだまっていると、もう一度「130ドル払え。今100ドル、ニューデリーに着いたら30ドル」
といいやがった。
「30ルピーのチケット買ってあるじゃないか」
「それはブッキング量。ガス代、運転手のマンパワー代でしめて130ドル」
ここではじめて、「やられたー」と思った。
最初ニコニコだった二人の顔が、今は鬼のようになっているし、それに助手席のやつが、ダッシュボードをガシャガシャまさぐっている。
「武器でも探してるんかなー」
すこしアタマに血が上ってきて、二人とも後ろから絞め殺したろーかとも思ったが、車が制御を失って横転してもこまる。
ちょうどその年、タイ国に新婚旅行に行った夫婦が白タクに乗って二人とも殺された事件があったのも思い出してしまった。
ここから俺の頭は寝ぼけ頭から、高速回転頭へと切り替わった。
ニューヨークの「ボトルマン」からも逃げたし、その他のトラブルも乗り越えてきた。
アタマをつかえばなんとか切り抜けられる、、。
しかし、車は市内に向かうというより、どんどん寂しい景色になってきている。
奴らめは、
「払わないなら車止めるぞ!!!」
「払うからちょっと待ってくれよ」
それから、3分ぐらいアタマを抱えて俺は考えている。
「車止めるぞ!!」
「払う、払う」
そんなやり取りが15分〜30分?いったい何分間だったのだろう、とにかく続いた。
なんか知らんけど、突然アタマの中に電球がピカーンと光った、
急に気持ち悪くなって悶絶するような演技をした、
「ぎょえーー、ぐわーーーー。気持ちワリーーーーー、降ろしてくれー」
運転手が「チッ」と舌を鳴らして車を止めた。
幸い荷物は大きなリュックサックひとつ。それをひっつかまえて、脱兎のごとく草むらの方へと逃げていった。
「追いかけてきたら、二人ぐらいボコボコにしてやる」と思っていたら意外とあっさりしたもので、追いかけては来なかった。
俺は胃がちょっとせりあがって、キリキリと痛んだ。
その後、軍事施設の前に来たので、事情を話して助けを求め市内まで送り届けてもらおうとしたが、あっさり
「バスに乗れ」と言われた。
バス停で待つのだが、表示がヒンディー語の文字なので読めないし、来るバス来るバスがバスの外に人がぶら下がるほどの混み具合。
結局オートリキシャー(バイクの後ろにカウルがついていて座席になっている)を止めて、空港で予約を入れた宿の紙を渡した。
ニューデリーの市内に近づく頃はもう日が暮れて、なんか町全体が縁日のような雰囲気。
やっと宿に到着。
ところが、空港で聞いた値段と違う。紙を見せると宿の人が
「これはこの宿ではない」
運転手を見て
「こっのヤロー」と殴りかかりそうな勢いでつっかかっていったら、
華奢(きゃしゃ)な運転手のお兄さんが非常にすまなそーな表情をしたので、こちらも疲れているし、
「じゃあ、この宿でいいよ」
ということにした。
部屋では、ちっちゃなねずみが出迎えてくれたけど。
バックパッカー諸君、ニューデリー空港では白タクにご用心!!!
(*翌年懲りずにまた訪印したのだから、インドという国は気に入ったのだろうな。着いてからのことを書き出すと、本一冊になってしまうのでこの辺にします)
インドの本といえば、やはり藤原新也先生の「印度放浪」
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あと、意外に渋いのが横尾忠則さんの「インドへ」
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彼の本は取り組みの浅いものが多いのだ。ファンの人ゴメンネ。