3月の読書

今年は花粉が少ないという話だったが、全然多いんじゃないの?昨日そう思ったが、今日はさらにそう思う。
やはりマスコミ(ネットも含め)報道というやつはまったくもって当てにならん。

さて、3月はとりあえず今日までで10冊読めた。

1.「エッセイ集」坂口安吾
太宰、檀一雄らと並び無頼派とよばれる人の一人。しかし、このころの作家というのははんぱじゃない飲み方と遊びかたをするね。世の中も、今からは想像できないぐらい乱れていて、もうはちゃめちゃだ。
今は、ふやけた世の中なので、作家らもふやけてるのかな。

2.3「物理学とはなんだろう(上・下)」朝永振一郎
古代の天文学とともに、最初は発達してきた科学・物理。
今や科学といえば、軍事目的に相当利用されている。その理由は、「恐怖心」であると朝永先生は言う。敵国が原爆を開発すれば、その上を行く兵器を開発しようとする。そのイタチごっこは永遠に終わらない。なぜか?
福祉に科学を活用しても、それを他社が開発したとしても、それで恐怖心が煽られるわけではないからと、朝永先生は言う。
なるほどね。でも、それってとても悲しい。

4.「聖書入門」小塩力
西欧人の思想、思考を理解するには聖書を知らなければと思い、買ったが、残念ながら悪書であった。少なくとも、キリスト教初心者にはまったく向いていない本。

5.「天皇ごっこ見沢知廉
知る人ぞ知る獄中作家。左翼から右翼に大きく振れた数奇な人生。パロディーでありながら、右翼の根本にある思想もわかり楽しめた。北朝鮮に、よど号赤軍派をたずねるツアーに行ったとき、日本の天皇制の完璧な姿を北朝鮮の国民の中に見たという皮肉。(実話だろうかね?)去年か一昨年自殺してしまったのは残念。

6.「幻視のなかの政治」埴谷雄高
確か、沢木耕太郎の「檀」の中に、埴谷雄高の名前があり、古本屋にこの本があったので、買ってみた。
階級闘争、革命の話。「やつは敵だ。やつを殺せ。」ただそれだけのことで、数え切れないほどの人々が殺されてきた。ヨーロッパでも日本でも。今はさすがに殺さないだろうけれども、闘争は続いていそうだ。

7.「香華有吉佐和子
文庫で550ページの大作。華岡青洲の妻とはまったく違ったアプローチの、母娘の確執を描いたもの。華岡は嫁姑だったが、これは実の母娘。娘は女郎に出され、母も夫から花魁として同じ置屋に送られる。自由奔放な母に対する娘の怨念、情念、憎悪、憧憬、愛情が渦巻く。

8.「やわらかな心をもつ」小沢征爾広中平祐
この二人は紛れもなく、音楽界と数学界の天才なのだが、この本を読むとごく普通の人たちで、それぞれの分野で彼らが本当に天才だと思っている人がたくさんいる、ということに驚く。
小沢さんの師匠は、あのサイトウ・キネンの斉藤秀雄さんなのだが、山本直純も同じく弟子だったそうだ。斉藤さんの教育方針とは、「出来る人は放っておいてもどんどん上に行く。大事なのは出来ない人の底上げをすること」。
これって、フィンランドの教育方針と同じだなと思った。
今の日本は、出来る人を伸ばすことをメインとして、出来ない層は切り捨てる。よって格差はどんどん広がる。その成果が今の格差社会
そんな図式が見えてしまう。

9.「日本語練習帳」大野晋
類語辞典」という名辞書を作った人だ。
文法を中心とする、問題と解説がメインとなる本だが、余談の中で、日本の作家の、例えば井上ひさし大江健三郎などは、辞書を一生懸命読んでいる。大江にいたっては、分厚い広辞苑が4回も壊れるほど辞書を引き倒し、同じものを買い換えているらしい。
文字で食べている人はそこまでやるのだなあと感動。

10.「写真の読みかた」名取洋之助
木村伊兵衛と同年代か少し上の人。日本ではなくドイツで写真家、特に報道写真家のキャリアをスタートした異色の人。しかし、古本屋でこの本を50円で買わなかったら、一生この名前は知らなかっただろう。
報道写真も、撮るときのフレームの取り方、他の写真との並べ方、キャプションでいかようにでも編集されるということが改めてわかった。
テレビがインチキなのはすでに周知の事実だが(もちろんまっとうなものもたくさんあるが)、新聞報道も上記をふまえて見ないと、簡単にだまされてしまう。
要は、マスコミ報道(ネットも含め)容易に信じるな。
Don’t believe the hype. (by Public Enemy) である。